日本すっぴん協会

#すっぴんを考える04〜美容時間は伸縮自在【美容ライター長田杏奈の連載コラム】

2019/07/05

コラムニスト : 長田杏奈


時間がないから美容ができないと考えている人は、安心してほしい。美容の時間というものは、麺のゆで時間や、電車の乗り換え時間のようにきっかり何分と決められているものではない。これをやらなければ失格!と定めるルールもない。日々の暮らしの中で、「このくらいならできるかな」という時間。その範囲内に収まるスキンケアやメイク=あなたの暮らしにちょうどいい美容時間。住まいの広さや間取りにあった家具を置くように、無理のないサイズ感&手の届く範囲のことをコツコツと積み上げた先に、あなたらしい未来の肌が待っている。



スキンケアの基本は、汚れを落とし、潤いを与えて守り、紫外線を防ぐこと。面白いもので、手をかけるほど、アイテムを増やすほど結果が出るという単純なものではない。実際に、たくさんのアイテムを駆使して美容を極めたプロが、ある日を境にパタリとシンプルケアに趣旨変えするケースは驚くほど多い。その反対に、シンプルケアに慣れた海外セレブが、クレンジング、洗顔、化粧水、美容液、乳液、クリーム、アイクリームと工程を重ねる日本式スキンケアセレモニーに、茶道にも似た「J-BEAUTY」文化を感じて取り入れ「肌が変わった」という例もある。素肌の力を引き出すミニマムケアも、オーケストラのように響きあう重ね使いの妙を愉しむのも、その間を取るのも、自分本位に選べばいい。


全部のパーツをしっかり仕上げて、きちんとした雰囲気に見せる。そういう教科書メイクがひと通りできることは大きな強みだ。けれど、「抜け感」という言葉が現役で「いいもの」とされる今は、あえて全部を完璧に仕上げないことで生まれるおしゃれを愉しむ絶好の機会。美容時間も、粋にショートカットすることができて、一石二鳥というもの。例えば、何かひとつマイナスしてみる。唇をリップクリームだけにするとか、アイラインを省くか目尻にちょっと引くだけに留めたり、チークを省くなど、何かひとつ引き算してみる。あるべき何かを、グッと我慢して引くことで、バランスが変わる。その差を味わう。もう少し勇気があるなら、2点盛りにしてみる。眉とリップ、まつ毛と肌など、パーツを絞ってメイクする。教科書とはだいぶ違うけれど、速やかに雰囲気のある顔になれる




「抜け感」に乗っかる方法以外にも、一日の中で少しずつ足していくという方法がある。本当に5秒でも長く寝ないと身が持たなそうな朝は、眉と肌だけ仕上げて、移動しながらミラーレスで塗ることができる軽いリップをなじませ、出先のパウダールームでアイメイクを仕上げる。午後になり、くすんできたらチークやハイライトを足す。夜予定があるときは、塗るのにちょっとした緊張感がいるリップに塗り替えて、盛る。朝に賭けすぎない、時間差継ぎ足しメイクは、美容時間の制約を乗り越えるひとつの知恵。


最初に、暮らしありき。美容時間は、主である自分の都合と気分次第で伸縮自在だということを忘れずに、ちょうどいいサイズで楽しみたい。

Profile

長田杏奈

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「美容は自尊心の筋トレ」をモットーに、美容ライターとして雑誌やwebメディア等で多くの記事を執筆。また、SNSでも「おさ旦那」の愛称で美容情報を発信している。著書「美容は自尊心の筋トレ 」(Pヴァイン)が2019年6月19日(水)より発売。

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