#すっぴんを考える03 ~化粧品選びの前に。肌を育む“食べ物”の話【美容ライター長田杏奈の連載コラム】
2019/06/07
コラムニスト : 長田杏奈
スキンケアをしたくない人には「しなくていい」と言うし、メイクをしたくない人には「そのままでいい」と返す。けれど、食べることをおざなりにしている人には、「好きにしていいよ」と言うわけにはいかない。化粧品に頼らずに健やかな肌を保っている人は知っているけれど、ちゃんと食べていないのに肌の調子がいい人にはまだ出会ったことがないからだ。私の知る限り、美肌の人ほどきちんと食べている。人は、そして肌は、あなたが食べたものからつくられる。そのことを、忘れないでほしい。
私自身、食をおろそかにしてひどく肌が荒れた時期があった。当時は、社会人デビューと同時に一人暮らしをはじめ、自炊をする余力も気力も、毎日外食するような経済的余裕もなかった。売れない営業マンだったので、せめて真面目さと費やす時間だけは人並みに……と、食事する時間を削って働いていた。その頃の主食は、コンビニで買える「バランス栄養食」と野菜ジュース。気休めにマルチビタミンを摂ることもあった。そんな生活を数ヶ月続けていたら、量をたくさん食べていたわけではないのに、みるみる身体が膨らんでスーツがパツパツに。何も塗る気になれないくらい肌が荒れてしまった。バランス栄養食と野菜ジュースとサプリメントでは、肌はおろか体さえも健やかに保つこともできないのだと、身をもって痛感した出来事だった。
美容ライターになってからは、取材や悩み相談企画でかつての私のような肌の荒れ方をしている人に出会うことがあった。まともに食事をすることを後回しにする日々を重ね、健やかな肌の材料が足りていない状態。
彼女たちは、たいてい真面目で責任感が強く、食事する間を惜しんで仕事や勉強に勤しんでいる。「食事の時間を切り詰めれば、終わらせることができる」「食べちゃったら集中力が切れて、眠くなる」「先輩や上司も食事をとらずに頑張っているのだから」という判断のもと、1日に1食も温かいご飯やお皿に並んだおかずを食べることなく、根を詰めて頑張っているのだ。
肌荒れは辛いものだけれど、身体の最表面で私たちを守っている肌からの健気なSOSサインでもある。身体や心が悲鳴をあげる前に、肌がいち早く「この生活は何だかおかしい! ちょっと立ち止まった方がいいんじゃない?」とアラートを鳴らしているのだ。
1日3食きちんと食べるのが難しい時も、せめて1食は心から「美味しそう♡」と思えるような、本能が求める食事を味わいながら滋養を取り込んでほしい。週末時間のある時だけでも店頭に並ぶ食材を吟味し、調理に手をかけなくてもいいから鮮度の高い旬の食べ物特有のエネルギーを、いただいてほしい。

最近では、料理する時間が持てないほど忙しい人のためのアイディアレシピ本が1ジャンルを築いているので、サバイブのために一冊手に入れるのも良い。予算に余裕があれば、宅配食材やメニューを取り入れて危機管理する方法もある。肌や身体を栄養不足にしないために、自分の生活スタイルに合わせたリスクマネジメントをすることは、健やかなすっぴんを育むための最重要事項といえる。
食事をする30分や1時間を惜しむ気持ちになっているときは、「食べなければ健やかにいきていけないのだから」と自分に言い聞かせて、必須の最優先スケジュールなのだと思い直すべきだ。特に、部下や後輩がいる人なら、率先して食事休憩を取り、人間らしくちゃんと食べるムード作りに責任を持って取り組んでほしい。食べることをおろそかにするのは、自分をおろそかにすること。「どんな化粧品を使うか」以前の、「何を食べるか」を、どうか大切にしてほしい。
Profile

長田杏奈
「美容は自尊心の筋トレ」をモットーに、美容ライターとして雑誌やwebメディア等で多くの記事を執筆。また、SNSでも「おさ旦那」の愛称で美容情報を発信している。著書「美容は自尊心の筋トレ 」(Pヴァイン)が2019年6月19日(水)より発売。