日本すっぴん協会

#すっぴんを考える02 ~メイクで描く自画像と未来図【美容ライター長田杏奈の連載コラム】

2019/05/03

コラムニスト : 長田杏奈


有名人がすっぴんの写真をSNSに投稿するだけで、ちょっとしたネットニュースになることはよくある。国内外を問わず、綺麗にメイクアップした写真よりも、素顔に反響がある。そればかりか、常にすっぴんな人のすっぴんではなく、普段メイクした顔に見慣れた人のすっぴんほどもて囃されたりする。


取材をしていると、「メイクが綺麗な人と思われるより、綺麗な人と思われたい」、「すっぴん風のメイクがいい」という意見を聞く。


メイクは本当の自分をカモフラージュし飾り立てる、作為的でフェイクなもの。そのメイクを落とした時に美しい人こそ、真の美人なのだという思い込みと憧れが私たちのどこかにあるのだろう。けれど、何も塗っていない状態=本当の自分というのは、ちょっと顔という表層、フィジカルに寄りすぎた考え方ではないだろうか。




顔だけでなく、心にもすっぴんがある。ありのままの何も塗っていない顔があるように、ありのままの自分らしい心というものがある。何も塗っていない顔よりも、メイクした顔の方が、自分のすっぴんの心や気分、もっというと魂のようなものを表現できることがある。
メイクの力を借りて、表面と内面がいい感じに調和した時には、安心感と自信が湧いてくる。まるで、顔の上に、内面を映す自画像を描いているような感覚だ。自分の中の多様な側面を日替わりで描き出してもいいし、毎日同じでも、白紙の日があってもいい。





心理学的には、メイクには気分を上げて励まし、積極性を与える効用があることがわかっている。
スキンケアが内側に向かう行為なのに対し、メイクは内側にも働きかけつつ外向きの自分を整える行為だ。私はメイクは自分にかける看板のようなものだと思っている。何が好きでどんなチャームポイントがあって、今どういう気分なのかを、出会う人に向けて告知することができる。お店の看板と同じで、心の自画像を反映した方が、それを見た人とのコミュニケーションも深くなって確度が上がる。



心理学の専門家に、「メイクは未来の自分の設計図になる」という話を伺ったことがある。


なりたい像をメイクに投影すると、自己暗示効果で振る舞いや言葉が変わり、それによって他人からの反応も変わる。自己暗示と他人からの反応の相乗効果で、やがては顔に書いた設計図通りの自分が出来上がっていくのだという。



丁寧に慈しんだすっぴん肌をキャンバスに、自分を覆い隠すメイクをするのはなんだか勿体無い。心のすっぴんを描き出すようなメイク、未来の自分はこうありたいという願いを託すメイクを楽しみたい。

Profile

長田杏奈

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「美容は自尊心の筋トレ」をモットーに、美容ライターとして雑誌やwebメディア等で多くの記事を執筆。また、SNSでも「おさ旦那」の愛称で美容情報を発信している。著書「美容は自尊心の筋トレ 」(Pヴァイン)が2019年6月19日(水)より発売。

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